17年に日本選手で最初に10秒の壁を破った桐生はどうか。今季序盤は10秒0台を連発するなど好調だったが、日本選手権以降はやや息切れの感じ。ただ、先行する選手がいても最後まできっちり走り切る技術とメンタル面が整いつつある。

 来年の東京五輪に向けては、9月末にカタールのドーハで開幕する世界選手権がひとつの指針になる。男子100メートルの出場枠は3。サニブラウンがすでに内定し、残りは桐生、小池の2人になる可能性が高い。五輪、世界選手権では1932年ロス五輪6位の吉岡隆徳以来となる決勝進出に期待がかかるが、そこは険しい道のりだ。世界を見渡せば、今年に入って9秒台を記録している選手がクリスチャン・コールマン(米)の9秒81を筆頭に日本人選手2人を含めて17人もいる。

 16年リオデジャネイロ五輪で銀メダルの400メートルリレーは、東京五輪でめざすところは金メダルしかない。サニブラウン、小池の台頭で層の厚さは格段に増した。リオ五輪の山県亮太(セイコー)、飯塚翔太(ミズノ)、桐生、ケンブリッジ飛鳥(ナイキ)から大幅にメンバーを入れ替えた7月のロンドン大会では多田修平(住友電工)、小池、桐生、白石黄良々(セレスポ)の4人で37秒78をマーク。今季世界2位の好記録で、東京五輪の出場もほぼ確実にした。

 ここにサニブラウンや山県らがどう絡むのか。9月末の世界選手権ではアンカーでサニブラウンの起用が予想されており、当面のライバル英国との差をいかに縮められるかが、注目だ。(朝日新聞・堀川貴弘)

週刊朝日  2019年8月16日‐23日合併号