二人は謝りたくて表に出てきた。都議選後に説明をするといっていた下村博文、睡眠障害といって説明から逃げた甘利明の両氏よりよっぽどマシだと書いた。どちらも汚い金の話だ。しかし、芸人と政治家、問題の重さが違う。

 そして芸人の謝罪した嘘について記者たちが痛罵するならば、安倍首相がこれまでついたあまたの嘘に対し、なぜ彼らは追及しないのだと思った。それこそ謝罪に追い込むほど追及するのが、本来のマスコミの仕事だ。マスコミの意味や意義はそこ。

 政治と芸人の話は別だという人がいるが、そうじゃない。報道している会社はおなじ。芸人たちに時間を割くということは、本来報道せねばならぬなにかの時間を減らすということだ。

 そういえば、松尾貴史さんが投票日前Twitterで、「黙っていることは『中立』ではなく『加担』であり『共犯』だ」といっていた。報じるべき物事の優先順位をわざと違えるのは、共犯だと思っていいか?

週刊朝日  2019年8月9日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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