一之輔は退散…老若男女の不思議な“交流戦”

ああ、それ私よく知ってます。

春風亭一之輔

2019/06/30 16:00

 死神博士「そちらの女性はFMでラジオジョッキーをされて……」 女性「パーソナリティですね」 博士「そうそう、パーソナル……」 女性「パーソナリティですね」 「……ですね」 死神博士が早々に諦めた。なんでもいいじゃないか。それが個性だよ、パーソナリティ。

「こちらは私のビジネスパートナーで……」 今度はパーソナリティがイカツイ男性を紹介。「格闘技をやっでますで、こわぐみられまずが、そんだこどないんでず」 絶望的に滑舌の悪いマンモス西、笑顔が可愛い。

「私はその家内で」 西の隣の女性が挨拶。西はパーソナリティとデキテルわけじゃないのか。「また使ってくださいね」とおじぎして西の家内は厨房に消えた。え? この店はマンモス西の店なのか? 居座る西。

「遅くなりましたっ!」と飛び込んできた金髪の外国人男性。「お土産です。これギネスに載ったんですよ」と福岡銘菓・博多通りもんをみんなに配り始めた。西夫人もカウンター越しにお礼を言う。何の集まり?

「ところで……私が先の大戦で家族をなくし、裸一貫で東京に出てきて数十年。ここまでやってこられたのも、みな☆☆先生のおかげっ!!」 死神博士が熱を込めて語り出す。手には一冊の本。私が耳をそばだててメモを取ってると、西夫人が私のテーブルにそっと通りもんを置いた。「誰でもお仲間です」

 この『交流戦』からは早々に離脱。こんなステキな喫茶店、寄席の近所にはいくつかある。

週刊朝日  2019年7月5日号

春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめた最新エッセイ集『まくらが来りて笛を吹く』が、絶賛発売中

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