ひきこもりの原因は社会的ストレス、発達障害、統合失調症など、さまざまだ。医師が原因を見極めて、適切に対応することが必要だ。宮西さんはこう話す。

「世間体を気にして相談できない親も多い。しかし、その生活に慣れてくると、ひきこもりが長期化してしまう。長くなるほどひきこもり本人が考え込んでしまい、対応が難しくなる。2、3年のうちに対処するのが望ましいです」

 学校でのいじめや友人関係から不登校やひきこもりにつながるケースも多い。文部科学省の調査によると、2017年度の小中学校の不登校の生徒数は14万4千人で増加傾向にある。家庭でどのように対応したらいいのか。

「ひきこもりを責めるのではなく、無条件に受け入れることが大切」

 こう言うのは岐阜県立希望が丘こども医療福祉センター児童精神科部長の高岡健さんだ。子供が不登校になったら、なんとかして学校に行かせたいと考えるのが親心だろう。しかし、こうした親の態度は、学校から退却することを選択した子供にとって、不適切だという。

「ひきこもりには意義がある。十分にひきこもることができれば、自分と対話して、満足する方向に進もうとする。大人や社会の価値観を押し付ければ、ひきこもりが悪化するか、押し付けられた人生を歩むことになり、根本的な解決にはならない。最悪の場合、自殺や殺人などにつながることもある」(高岡さん)

 各都道府県や政令指定市には相談窓口がある。東京都では「ひきこもりサポートネット」(フリーダイヤル0120−529−528)、大阪府では「ひきこもり地域支援センター」(TEL06−6697−2890)などだ。民間では全国の家族会、支援団体が集まる「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」などがあり、活動を行っている。

 家族だけでなんとかしようとすると、対応が単調となり、事態は改善しないことが多い。問題は抱え込まず、専門家とともに対応を考えることが重要だ。(本誌・吉崎洋夫)

週刊朝日  2019年6月21日号

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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