これに対する政府の対策は、「特定技能」制度による外国人労働者導入だが、残業減のために人員を増やせる企業には有効でも、そうでない企業には意味がない。残業は減らさざるを得ず、しかし、仕事をこなすために新たに人を雇う余裕がなければ、経営者自らが寝ないで働くことになる。そして、限界を超えれば倒産、さらには経営者の自殺の増加などという事態さえ想定される。
こうした苦境は誰でも想定できる。それなのに、政府は、今年10月に消費税を増税しようとしている。中小企業には大きな負担だが、その上に軽減税率という複雑な仕組みが負担を倍加する。さらにキャッシュレス化のゴリ押しだ。消費増税・軽減税率・キャッシュレス化の三重苦である。
これだけの負担を一時期に押し付けながら、「中小企業強靭化法案」で災害に備えましょうというのはどういう神経なのか。例えて言えば、「大津波が迫っているのに、それに背を向けて、家の雨漏り修理計画を作っている」ようなものだ。審議後、ある衆議院議員は、「古賀さん、気づきませんでした。確かに来年から大変ですね」と話しかけてきた。これは笑い話では済まない。企業の生き死に、そして人の生き死にに関わる問題だ。
一連の天下の愚策を安倍政権は直ちに見直すべきだ。
※週刊朝日 2019年5月17日号