古賀茂明(こが・しげあき)/1955年、長崎県生まれ。東京大学法学部卒業後、旧通産省(経済産業省)入省。国家公務員制度改革推進本部審議官、中小企業庁経営支援部長などを経て2011年退官、改革派官僚で「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。元報道ステーションコメンテーター。最新刊『日本中枢の狂謀』(講談社)、『国家の共謀』(角川新書)。「シナプス 古賀茂明サロン」主催
古賀茂明(こが・しげあき)/1955年、長崎県生まれ。東京大学法学部卒業後、旧通産省(経済産業省)入省。国家公務員制度改革推進本部審議官、中小企業庁経営支援部長などを経て2011年退官、改革派官僚で「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。元報道ステーションコメンテーター。最新刊『日本中枢の狂謀』(講談社)、『国家の共謀』(角川新書)。「シナプス 古賀茂明サロン」主催
安倍政権の3つの愚策とは?(c)朝日新聞社
安倍政権の3つの愚策とは?(c)朝日新聞社

 元経済産業省の改革派官僚・古賀茂明さんの連載「政官財の罪と罰」。今回のテーマは「中小企業を襲う安倍政権の愚策」。

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 4月24日の衆議院経済産業委員会の参考人質疑に呼ばれた。「中小企業強靭化法案」の審議のためだ。この法案の柱の一つは、中小企業が「BCP」と呼ばれる事業継続のための計画を予め作って、災害などの緊急事態に備えるように、政府が補助金などで誘導しようというものだ。

 こう聞けば、いい政策だと思うだろう。しかし、私は、首を傾げた。

 それは、来年には中小企業をほぼ100%確実に襲う災難があるのに、その対策が、この法案に入っていなかったからだ。

 その災難とは、人手不足である。「人手不足なら今に始まったことではないじゃないか」という人もいるかもしれない。しかし、この人手不足に加えて、来年度からは、中小企業に新たな負担がのしかかってくることを、どうも政府関係者は忘れているようだ。

 それは、今年度から大企業向けに始まった残業規制の強化が、来年度から中小企業にも適用されるということだ。これまで36協定と呼ばれる労使協定を結べば、事実上青天井で認められていた残業に厳しい上限が設けられ、罰則がかかる。中小企業だからと認められた1年の猶予期間が切れるのだ。

 人手不足は日々深刻化している。名目賃金も上昇傾向が明確だ。これらを背景に、2018年度の人手不足倒産は、史上最多の400件と急増した(東京商工リサーチの調査)。

 そんな中での厳格な残業規制導入。同じ仕事を短い時間でこなせということになる。さらに、安倍政権は、今後も最低賃金をどんどん上げる姿勢を示している。この「働き方改革」を成し遂げるには、それでも儲かるビジネスモデルに転換する「生産性革命」が必要だ。実は、この「働き方改革=生産性革命」を成し遂げるために、欧州諸国などは30年程度かかっている。

 しかし、日本では、「革命」と呼ぶ大きな変革をわずか1年で達成しろということになった。まさに「ミッション・インポッシブル」。特に、中小企業は深刻だ。

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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