「パソコンやスマホの中の情報は、自分自身の教養ではありません。自分の頭を使って自分の肉体の中に刻み込まれてこそ、初めてそれは教養となり知恵となるのですから。たいして考えもせず、『孤独』の表層的な意味に流されないこと。『孤独』という言葉に連れていかれないことだと思います」

 田中さん自身は、いつも一人で畑を耕している。そこには自然との関わりがあるので、一人でいる感じがしないという。「ウグイスの声が聞こえ、雲が流れ、風や光、目に見えるもの以外の存在だってたくさんある。土の中は、僕が植えた野菜の種以外にも、命だらけなんです。その命がちょっとしたきっかけでワッと芽を吹く。とても孤独だとは感じられない。自然を楽しむ視点を持てば、見えてくるものも全然違います」

 せっかくの人生だから、地球のこと、宇宙のこと、人間が認知しうる世界のことをもっと学んで、「ああ、そういうことだったのか」「そこに俺は生まれてきたのか」と納得し、満足して死にたいと思っている。

「そのためには生きている限り勉強をしないといけませんしね。IT化社会に頼りきって人間の能力がどんどん低くなるようでは困ります」

“流されない”。田中さんの生きる姿勢は、徹底しているのである。(ライフジャーナリスト・赤根千鶴子)

週刊朝日  2019年5月3日号‐10日合併号