打者も投手も、職人技だけでは生き抜けない時代になっている。投打にパワー全盛の波が押し寄せている。パワーやスピードという基本があった上で、技を身につける必要がある。

 選手の野球の変化により、監督に求められる資質も変わってくる。攻撃面においては、取るべき選択肢は減っている。1点を取るために作戦面が細かすぎれば、選手の能力を最大化できないからだ。今は1点を取るよりも2、3点を取ることが求められる。まだ継投やディフェンスにおいては、細かさが求められるが、監督は選手の能力を発揮させるために、いかによりよい方向に導けるかが大切。かつては管理野球、緻密(ちみつ)な野球がたたえられたが、攻撃面では緻密がすぎれば選手の能力を半減することにもつながってしまう。

 ただ、それでスモールベースボールと言われる日本の誇る緻密さ、特長はなくしてほしくはない。投手戦で1点勝負の時には必ず必要な勝負手がある。バントがないからといって、練習しなくていいわけではない。「スケールの大きい野球」と「雑な野球」は意味合いが違う。選手も、そこだけは肝に銘じてもらいたい。

※週刊朝日 2019年5月3日‐10日合併号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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