ジャーナリストの田原総一朗氏は、勤労統計の不正問題について特別監察委員会が公表した調査結果を疑問視する。
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厚生労働省の毎月勤労統計の不正問題を特別監察委員会までが強引にねじ曲げようとしていないか。
この問題について野党が政府を責め立てたのは、一つは、不正の実態を解明するためにと称して立ち上げた第三者委員会による聞き取りを、実は厚労官僚が7割近くも行っていたことだ。これではとても第三者とか、中立といえないのではないか、というのだ。
この責め立ては当然で、厚労官僚が7割近くも聞き取りを行っていたということは、本当に解明されるとよほど困ることがあるのだと思わざるをえない。
そして、野党が最も問題にしたのは、2018年1月に統計の取り方が変更されたことだった。
なぜ、厚労省は統計の取り方を変更することになったのか。
野党は、15年9月14日に、当時首相秘書官であった中江元哉氏が厚労省幹部に統計の取り方の変更を求め、厚労省はそれに応じて変更したのではないか、と厳しく追及し、中江氏は国会に出てきたのだが、当初は「まったく記憶にない」と繰り返していた。だが、野党のしつこい追及に「そのようなことを言ったが、まったく個人的見解だ」と話した。
そして安倍首相は、中江秘書官に何も言っていないし、何の報告も受けていない、と述べた。つまり、まったく関係ない、というわけだ。
だが、首相秘書官が勝手にそのような重要なことを言うのだろうか。
こうなると、加計学園疑惑とそっくりの構図になる。
加計学園が愛媛県今治市に獣医学部の新設を強く望んでいたとき、当時の首相秘書官の柳瀬唯夫氏が愛媛県と加計学園幹部と複数回折衝していた。ところが、首相から言われたのではなく手前勝手にやっていたのであって首相に報告もしていない、という。そして安倍首相は、加計学園が特区の事業者に決まるまでまったく知らなかった、と答弁している。安倍首相と加計孝太郎氏は40年来の友人で、年に何回も食事をし、ゴルフもしているのである。