その後、ワインを樽などに移し替えて一定期間熟成させる。樽熟成により、樽の成分が抽出してより複雑な風味が生じる。樽由来のヴァニラやチョコレートを感じさせる香りもここで付く。樽熟成の味を強調するか、控えめにするのかはワインの作り手の考え方による。


 
 その後、ワインの澱引き(スーティラージュ)や清澄(コラージュ)をし、酵母菌の死骸などを除去する。その後、濾過(ろか)してさらに固形物を取り除いたり、低温加熱殺菌(パスツリゼーション)を行ったりする場合もある。このあと、ワインは瓶に詰められて瓶内熟成をする。ワインの種類によるが、ある程度時間をおいたワインのほうが、熟成が増しておいしくなることはよく知られている。

■白ワインは液体部分だけを、酵母を使ってアルコール発酵させる
 
 白ワインの造り方についても簡単に説明しよう。
 
 収穫するのは白ブドウ(実際には果皮は緑色のことが多い)だ。これを破砕、除梗を行い、酸化防止や殺菌目的で亜硫酸を加える。白ワインは赤ワインと違い、この時点で液体と固体を分離する。そして液体部分だけを酵母を使ってアルコール発酵させるのだ。
 
 白ワインの発酵は低温で行うのがよいとされており、発酵中に発生する熱を人為的にあえて下げて低温で発酵させる(15~20度)。低温で造ったほうが、発酵が遅くなり、香り成分が作られやすく、また空中に散布されて失われにくい。その後、場合によって赤ワイン同様にマロラクティック発酵を行い、熟成をさせて、澱引き、清澄、濾過(ときにパスツリゼーション)する。

 白ワインも樽熟成をさせる場合もあり、その場合は俗に「樽を効かせた」というまろやかな味わいと香りが加わる。シャルドネなどは樽熟成をさせた場合とさせない場合とでは味覚も香りも違っていて、まったく別のワインのようになる。
 
 最後に瓶詰めを行い、さらに瓶内で熟成させる。あえて澱引きをせずに澱の風味を残す方法もある。シュル・リー(sur lie)と呼ばれる方法で、ロワールのミュスカデや日本の甲州などに行われている技術だ。

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岩田健太郎

岩田健太郎

岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著にもやしもんと感染症屋の気になる菌辞典など

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