第三の真実は、ソーシャルメディアが権威主義の体制と矛盾するものではなく、むしろその体制を強化するということだ。ソーシャルメディアにフェイクニュースやヘイトスピーチが蔓延していることからもわかるように、現代の情報過多の環境では、慎重なものよりも極端で過激な情報に注目が集まる。その特性を利用して、すでに複数の政府が、国民の統制や説明責任の回避を目的とした世論操作を実施している。

 さらに、ソーシャルメディアによるきめ細かなユーザー監視は、権威主義の体制と結びつくことで、強力な国民統制が可能となる。その一端は、アリババ集団やテンセントなどの大企業と共に、大規模な社会信用システムを構築する中国政府に見ることができよう。

 デイバート教授は問題が複雑に絡み合っている以上、ソーシャルメディアの自主的な対応や小手先の規制では改善できないと語る。我々がこのことを深刻な社会問題と認識し、市場経済や権威主義的な政府とソーシャルメディア事業者が深く結びつきすぎないよう、法律で規制したり、生活様式を変えたりすることが求められているのだ。

週刊朝日  2019年2月1日号

著者プロフィールを見る
津田大介

津田大介

津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『情報戦争を生き抜く』(朝日新書)

津田大介の記事一覧はこちら