伐採した理由について尋ねると、

「現場付近には送電線が通っており、木が高くなると定期的に伐採していた。普段は、木が送電線にかからないように、上のほうだけ切りますが、台風などで樹木が倒れて引っかかる危険性があるので、(前の)地権者と協議して、根本から切りました」

 しかし、4月から地権者となったAさんとは協議はしていない。
その上、現場をよく見ると、倒れても送電線に引っかからない場所の木も伐採されている。

 なぜ、環境大臣の許可を得ていなかったのか。

「伐採した業者との行き違いあった。そこで、環境省に顛末書を出し、現在では許可を得た認識です。環境省からは、事前に許可を求める様にと注意を受けました。環境大臣の許可が必要であること、当該の場所が、自然環境にも重要であることは、わかっていた。これからは気をつけたい」(前出の担当者)

 伐採された樹木を見てゆくと、直径が60cm以上もある松の巨木が少なくとも5本は含まれる。昨年の補償額は12万4千円となっているが、地元の業者に聞くと、何倍もの価値があるという。伐採した木がどうなったのか、その行方を聞いたところ、

「切った木、どっかいってしまった。ちょっとわからないんです」と担当者は言うばかりだった。

 環境省は本誌の取材に対し、「個人情報が含まれることなので、答えられない」。

 福島第1原発で甚大な事故を起こし、今も10万人を超す人が故郷に戻れない。その過程で、東京電力が「法令遵守」よりも企業利益優先の姿勢が問題となった。

 今回もまた東京電力の100%子会社で法令を「無視」し、国立公園、世界遺産まで破壊していた実態が浮かび上がった。  (本誌取材班)

※週刊朝日オンライン限定記事