帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
※写真はイメージ (c)朝日新聞社
※写真はイメージ (c)朝日新聞社

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。死ぬまでボケない「健脳」養生法を説く。今回のテーマは「認知症と免疫」。

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【ポイント】
(1)一般には自己の中の非自己を排除するのが免疫
(2)脳においては免疫細胞が正常な脳細胞を維持する
(3)人間が本来持つ免疫力で認知症を克服する

 今年3月に日本語訳が出版された『神経免疫学革命──脳医療の知られざる最前線』(ミハル・シュワルツ、アナット・ロンドン著、松井信彦訳、早川書房)という本があります。これについては以前にも紹介したのですが(2018年5月18日号)、今回、この本で述べられている認知症と免疫の関係について、もう少し詳しく説明したいと思います。

 免疫の働きのなかで一般的でわかりやすいのは、細菌などの外敵が体内に侵入したときに、それをやっつけるために、免疫細胞が出動するというものです。つまり、自己の中に生まれた非自己を排除するのが免疫の働きなのです。

 がんの場合ですと、もともと自分の細胞だったものが、がん化してしまい非自己になってしまっているわけです。それを免疫の力で抑えようとします。最近注目され期待されているがんの免疫療法は、基本的にそういう考え方です。

 では、認知症といった脳に対する免疫療法とはどういうものなのでしょうか。認知症の原因になると見られているアミロイドβやタウタンパクを排除する仕組みなのでしょうか。

 本を読んでみると、どうもそういった自己vs.非自己という話ではないようなのです。正確を期すため本の文章を引用します。

「免疫系の働きはもっとはるかに複雑である。近年、パラダイムシフトが起こり、現在では『免疫細胞は正常な脳細胞の維持にとって重要であり、修復のプロセスにとっても有益という可能性がある』と広く考えられている。免疫系が機能しなくなると、認知や情緒が損なわれたり、損傷後の再生がうまくいかずに神経変性疾患の進行を促す結果となったりしかねないのである」

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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