ジェームズ・ボンドは酒浸りで手が震えていた!? 感染症屋が語る映画「007」と酒 (1/3) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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ジェームズ・ボンドは酒浸りで手が震えていた!? 感染症屋が語る映画「007」と酒

連載「ワインは毒か、それとも薬か」

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岩田健太郎週刊朝日#ライフ
岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著に『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』など

岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著に『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』など

原作ではボンドが乗る「ボンドカー」がベントレーなのに、映画では(ほとんどが)アストンマーティン。ジェームズ・ボンド好みのシャンパンも「テタンジェ」から「ボランジェ」になっている(写真:getty images)

原作ではボンドが乗る「ボンドカー」がベントレーなのに、映画では(ほとんどが)アストンマーティン。ジェームズ・ボンド好みのシャンパンも「テタンジェ」から「ボランジェ」になっている(写真:getty images)

 感染症は微生物が起こす病気である。そして、ワインや日本酒などのアルコールは、微生物が発酵によって作り出す飲み物である。両者の共通項は、とても多いのだ。感染症を専門とする医師であり、健康に関するプロであると同時に、日本ソムリエ協会認定のシニア・ワイン・エキスパートでもある岩田健太郎先生が「ワインと健康の関係」について解説する。

*  *  *
 ショーン・コネリー主演の007映画、「ダイヤモンドは永遠に」。この作品ではほかにも、シェリーを飲んだボンドが「これは1851年ものだ」といって、M(ボンドの上司)に「シェリーにはビンテージはないよ」とたしなめられる。が、ボンドはしれっと「シェリーの原酒のビンテージのことだ」とやり返している。

■古いシェリーに新しいものを足して造る「ソレラシステム」

 シェリーはソレラシステムといって、樽をどんどん積んでいき、樽に入った古いシェリーにどんどん新しいシェリーを足して造るスペインの特殊なワインだ。だから、いろいろな年代のワインが混じるわけだ。よって、たしかにビンテージはない。

 子どものとき、この映画を見たぼくは「なんのこっちゃ」と思っていたが、大人になって、ビンテージも理解し、ようやく得心がいったというわけだ。

 1956年に発表されたイアン・フレミングの原作小説『ダイヤモンドは永遠に』が手元にある(井上一夫訳、創元推理文庫)。この原作(の翻訳本)のページをパラパラとめくれば件のシーンが見つかるかと思って探したが、シャトー・ムートン・ロートシルトのエピソードは見つからない。映画オリジナルのストーリーだったのだろうか。

 代わりに「ボリンガー」という名のシャンパンが登場する。

 これはフランスの有名なシャンパン「ボランジェ(Bollinger)」の誤訳というか、誤発音であろう。1960年にこの翻訳本は出版された。ぼくも翻訳をよくやるのだけど、固有名詞の発音は本当に困る。しかし現在はネットやメールがあるので、検索はとても楽になった。いろいろな意味で海外が非常に遠かった60年代、ネットのない時代に固有名詞を正確に訳出するのは困難だっただろう。


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