コラムニストで、流行語大賞の選考委員も務めた辛酸なめ子氏はこう指摘する。

「そもそも今年1年の事象を、漢字一文字で表すのが、無理があると思いますが…。だから、災という字が2回目というのも、ありになるんだと思ったし、ゆるい感じがします。日本は天変地異なので、毎年『災』でもおかしくない」

 同じく漫画家のやくみつる氏も、こう指摘する。

「公募の限界という一言でしょうね。奇をてらったものもよくないですが、あまりに凡庸すぎるものが出すぎてしまいます。『災』という文字もこれまで発表されてきた中で2回目。高輪ゲートウェイも公募でしたが、結局、批判の対象となってしまった」

 両者が口を揃えるように、今回、選ばれた「災」は2回目で、前回は2004年で、台風や地震などの記録的な天災や、イラクでの人質殺害や子供の殺人事件など、人災が多発していた年だった。

 その回数を超え、3回も選ばれている漢字もある。
2002年、2012年、2016年のオリンピックイヤーで3度、「金」が選ばれているのだ。

 今年は平昌での冬季オリンピックで金メダルラッシュであったが、「金」の得票数は10位だった。
ちなみに今年の2位に選ばれたのは、「平」。平成最後の年。平昌五輪でのスピードスケートの小平奈緒選手、スノーボードの平野歩夢選手をはじめとする日本勢の活躍。大リーグでは大谷翔平選手が新人王を獲得。南北首脳会談、米朝首脳会談などにより平和への期待が高まったなどが理由として挙がった。

「今年の漢字」の初めての年となった1995年は「震」。阪神・淡路大震災や、オウム真理教事件、金融機関などの崩壊に震えた年から始まった。そこから「食」「倒」「毒」と続いていった。

「やはり、年初めの言葉だと、年末が近づくにつれて薄れてきてしまいます。ただ、おしょうさんが文字を書くのは、権威を感じられ、格式高いものになっています」(辛酸なめ子氏)

 2018年も年の瀬。平成最後の年に、改めて「災」を忘れないよう心に刻み、新しい年を迎えたい。(本誌 田中将介)
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