田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
(イラスト/ウノ・カマキリ)
(イラスト/ウノ・カマキリ)

 ジャーナリストの田原総一朗氏は米・中間選挙の結果とその影響について解説する。

【この記事の関連画像はこちら】

*  *  *

 世界中が注目していた、米国の上下両院の中間選挙の結果が判明した。

 上院は事前から予想されていたとおり、共和党が過半数を保ったが、下院は民主党が過半数を獲得した。選挙が近づくにつれて、トランプ大統領の共和党が盛り上げて、情報通などが予測できない、と言っていたのだが、結局民主党が過半数を得た。

 下院で民主党が勝ったのは、大統領選挙のときに予備選挙でサンダースに投票した民主党員たちの多くが投票所に行かなかった、つまり棄権したために、ヒラリー・クリントンが敗れてトランプ氏が当選したことを後悔して、今回は投票所に行き民主党に投票したためだと言われている。

 特に、トランプ氏のあからさまな女性蔑視や、日本では大問題となったLGBTを“断固認めない”と言い切ったことなどに対する、民主党の女性たちの怒りが爆発した。大統領選挙では棄権した女性たちが、怒りをぶつけるために「トランプNO」の投票をしたのである。

 中間選挙に出馬した女性候補者は上下両院で計250人を超え、過去最多を更新した。下院で当選した女性候補の圧倒的多数は民主党である。

 そして、その中には米国の先住民やイスラム教徒も含まれている。先住民やイスラム教徒の女性が下院議員になるのは、これが初めてである。

 若い世代の多くが投票に参加したのも、今回の中間選挙の特徴だと言われている。トランプ氏の露骨な反民主主義的なやり方に、女性や若い世代が強い危機感を抱いたのだろう。

 だが、下院での敗北でトランプ氏の政策はどのように変わるのか。変えざるを得ないのか。

 もっとも、外交政策は上院が実権を握っており、外交政策での変化はほとんどなさそうである。特に中国に対する、新冷戦ともいわれる強硬政策については、実はトランプ氏のやり方に強く反発している議会も、共和党と対立しているはずの民主党も同意しているのである。いわば、オールアメリカと中国との対決だ。

著者プロフィールを見る
田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

田原総一朗の記事一覧はこちら
次のページ