銃撃犯が度々ヘイトスピーチを投稿していたことが報じられると、ギャブはすぐさま声明を発表。「テロリズムや暴力を一切容認しない」とした上で、容疑者のアカウントを凍結し、FBIに情報提供したことを明らかにした。その一方で、ギャブに関する報道について、ツイッターやフェイスブックなども犯罪者や犯罪行為に利用されているのに、なぜギャブだけが非難されるのかと反論。ギャブの使命は、「インターネットにおける表現の自由と個人の自由を守ることだけだ」と強調した。

 しかし、ギャブにサービスを提供してきたテクノロジー企業はギャブを切り捨てる選択をした。事件後、ドメイン管理サービスの「ゴーダディー」、決済サービスの「ペイパル」と「ストライプ」、ホスティングサービスの「ジョイエント」、ブログサービスの「ミーディアム」が、相次いでサービス提供を停止。その理由について、ゴーダディーとペイパルは、利用規約に違反する暴力の扇動やヘイトスピーチが確認されたためとしている。

 ソーシャルメディア運営に必要な機能を失ったギャブは10月29日、サービスの一時停止を発表。メディアとテクノロジー企業による「検閲と中傷」だと非難した。

 以前から米国ではヘイトスピーチも表現の自由に含まれると解釈され、見過ごされてきた。トランプ大統領誕生以降、ヘイトスピーチが現実のヘイトクライムとして顕在化するようになり、テクノロジー企業も対応を強化せざるを得なくなっている。間違いなく米国の「表現の自由」は曲がり角に来ているのだ。

週刊朝日  2018年11月16日号

著者プロフィールを見る
津田大介

津田大介

津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『情報戦争を生き抜く』(朝日新書)

津田大介の記事一覧はこちら