渾身の“緊縛ミステリー” 中村文則「経験ある人はぐっときます」 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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渾身の“緊縛ミステリー” 中村文則「経験ある人はぐっときます」

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仲宇佐ゆり週刊朝日#読書
中村文則(なかむら・ふみのり)/1977年、愛知県生まれ。2002年『銃』で新潮新人賞を受賞し、デビュー。05年「土の中の子供」で芥川賞。10年『掏摸〈スリ〉』で大江健三郎賞、英訳がウォールストリート・ジャーナルの12年年間ベスト10小説に(撮影/小山幸佑・写真部)

中村文則(なかむら・ふみのり)/1977年、愛知県生まれ。2002年『銃』で新潮新人賞を受賞し、デビュー。05年「土の中の子供」で芥川賞。10年『掏摸〈スリ〉』で大江健三郎賞、英訳がウォールストリート・ジャーナルの12年年間ベスト10小説に(撮影/小山幸佑・写真部)

 決して厚い本ではないのに、読後感はずっしりと重い。中村文則さんの新刊『その先の道に消える』は、緊縛をモチーフにしたミステリー仕立ての小説だ。

【中村文則さんの新刊『その先の道に消える』はこちら】

「16年書いてきて、到達点になる作品が一つできた。自分で読み返したときに、そう思いました」

 アパートの一室で緊縛師の遺体が発見される。部屋には刑事が思いを寄せていた女性の痕跡が残されていた。風俗店の男と「奴隷」になった女性たち、神社の宮司らの人生が交錯し、意外な結末へと進む。

「緊縛というSMの性的な話から、緊縛に使われる麻縄、神社のしめ縄、日本文化、日本が誕生したときの神話まで、無理なくテーマがつながっていきました。神話まで行くとは自分でも思っていませんでした」

 殺された緊縛師は日本人の独自性を誇りにしていた。ただ、日本の伝統の素晴らしさはあるものの、日本の成り立ちにさかのぼれば他地域からの影響は否めない。ミステリーに溶け込ませる形で、ナショナリズムに冷静さを突きつける要素を入れられたという。

 物語に並々ならぬ緊張感を与えているのが緊縛シーンだ。中村さんは緊縛の世界を知ったとき、純文学のテーマになると考えた。人間の精神の奥まで届く深さを感じたからだ。

「縛られることによって、性に対する躊躇(ちゅうちょ)をあきらめ、解放される。いつもより乱れることを自分に許せるという方も多い。僕は善悪の境界をずっと書いてきたんですけど、SMも善が悪に、苦しみが快楽になる」

 男性だけの目線にならないように、縛られる女性の気持ちを取材し、文章チェックもしてもらった。「これを読んだら、経験ある人はぐっときますよ」と女性に言われたそうだ。


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