一方で一部の考古学者の間では、来年に目指す大山古墳を含めた「百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群」の世界文化遺産登録をきっかけに史実に対する「誤認」が広まる懸念もあるという。

「大山古墳」という名は、考古学者の故森浩一氏(同志社大学名誉教授)が、天皇陵墓名でなく、遺跡の命名法に従って地元の呼称を古墳の名称とすることを、1970年代後半ごろから提案。教科書の表記も大山古墳の名が定着していた。そもそも古墳時代に天皇号はなく、後の飛鳥時代や奈良、平安時代に「仁徳天皇」の名が創られたと、今尾氏は指摘する。

 だが、同庁によると「ユネスコに提出された推薦書には、『Nintoku-tennou-ryo Kofun』と表記されていると承知しています」という。

 いずれにせよ、慎重な調査による“ミステリー”解明に期待したい。(本誌・岩下明日香)

週刊朝日  2018年11月2日号