「目標が明らかになれば、今のゲームの時間を目標達成のために使ったほうがいいのでは、とカウンセリングを進めていきます。中学生以下ではまだ目標を決めづらいので難しい面もあります。しかし、ゲーム依存症はほかの依存症よりも治りやすく、本人が現状の問題に気づくことができれば、通常、その後4~5カ月で治っています」

 高校2年生のAさんの場合、入学時にスマホを買ってもらったのをきっかけにゲーム時間が増え、今年の1学期半ばについに不登校になってしまった。食事もろくにとらずに、成績も落ちていたことから、夏休み前に母親が墨岡医師に相談した。母親を通したカウンセリングが効き、夏休み中には本人も来院することができ、目標とする大学もはっきりした。

「Aさんには、その大学に入りたいならゲームの時間を勉強時間にしたら、と話しました。目指す将来像を英単語帳ほどの大きさの紙に書いてもらい、スマホを取り出したら同時にその紙を読めるようにもしました。依存症治療は、目標をはっきりさせ、常に意識させることが重要です」(墨岡医師)

 30代の会社員Bさんは、ゲームのアイテムやキャラクターに200万円以上をつぎ込んだ。仕事中にもスマホでゲームがやめられず、ミスが目立つようになった。カード払いの請求書から妻が知ることとなり、相談を受けた墨岡医師は、ゲームの時間制限から始めた。大人の場合、直接話すことができれば、聞き入れられやすいため、時間をはじめ、ゲームをやる場合のルールを決めることが重要だという。Bさんは、時間だけでなく、課金には手を出さない、と決めた。

 Aさん、Bさんをはじめ、ゲームやインターネットなどを通して、いわばスマホに振り回されている人に向け、墨岡医師はこうアドバイスする。

「自分にとってスマホとは何なのか、何のために使うのかをいま一度考え直し、スマホに使われるのでなく、使いこなすようにしてください」

(文/近藤昭彦)