子どもも大人も、依存症患者は自分が依存症である自覚がないことが多い(※写真はイメージです)
子どもも大人も、依存症患者は自分が依存症である自覚がないことが多い(※写真はイメージです)

 自分の意思ではコントロールできないほどゲームにのめり込むゲーム依存症(ゲーム障害)。ゲームに時間やお金を費やすあまり、学業や仕事から人間関係にまで支障をきたすようになる。ゲームに集中するために自室に引きこもってしまうケースも珍しくないこの「病気」をどう治療するのか。ゲーム依存症の治療例が豊富な精神科の専門医に取材した。

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 ゲーム依存症の治療は一般的に、毎日の行動を記録する(日記をつける)記録法、モノづくりなどを通してリアルな世界での楽しみを見つける作業療法、体を動かす爽快感を味わう運動療法、人間関係を円滑にするためのソーシャル・スキル・トレーニング、そして認知行動療法などを組み合わせておこなわれる。

 成城墨岡クリニック院長で精神科医の墨岡孝医師は、主に認知行動療法を取り入れている。この治療法は、カウンセリングを通して、患者自身が現在の問題点に気づき、その解決のための目標も患者自身が決めたうえで、考え方(認知)や行動を修正していく手法であり、うつ病や不安症など、精神科領域の治療で広く使われている。

「まず、現在の生活を自覚してもらうために日記をつけ、主に、いかにゲームに長時間を費やしているかに気づいてもらいます。それをもとに改善のためのスケジュールを立てます。ゲームの時間は、何時間までならよいという目安は難しいので、“今より減らす”を繰り返します。その過程で、自分にとってのゲームとは何かを考えてもらい、目標達成のためにゲームとどう付き合うのかを決めていきます。子どもでは不登校の子も多く、その場合、不登校の問題も含めた話し合いになります」(墨岡医師)

 子どもも大人も、依存症患者は自分が依存症である自覚がないこともあり、はじめから本人が来院することはほとんどない。墨岡医師は最初の1カ月は、家族に、危険性も含めてオンラインゲームやSNSについての理解を深めてもらうための教育期間と位置づけている。日記をつける、などは本人が来院できなくても始め、本人が書いたものを家族に持ってきてもらうことがある。「仲間からの誘いが断りきれない」といった個別の問題は、その都度、話し合って対策を講じる。墨岡医師は言う。

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スマホゲームで不登校に