原田:バブルの終わりごろですね。「地方再生」とかいって、政府がけっこうお金をばらまいてる時期でした。「ふるさと創生1億円」とかいって、1億円もらっちゃった自治体はどうしていいかわからないので、「伊藤忠さん、どうしたらいいと思う?」という相談が結構あって。

林:ああ、覚えてます。自治体が純金のこけしを買ったり。

原田:「あそこが純金のこけしを買ったから、うちは純金のコインを買おうと思う」とかいう話を持ち込まれて、「だったら絵画を買ったらどうですか」みたいな話をしていました。自治体はどんどんハコモノをつくるけど、中身がない。それで「コレクション、どうしたらいいんでしょう」みたいな相談があって、ピカソやダリを紹介したり。そのとき、「これはしっかりアートを勉強しなくちゃいけないな」と思って、早稲田大学に入り直したんです。

林:キュレーターの仕事って、資格がないとできないんですよね。

原田:ええ。博物館法に登録している登録博物館に学芸員として勤めるためには、国家資格が必要なんです。大学にいる間に、ある科目を履修すると、国家資格が取れる。それで早稲田大学の第二文学部で美術史を勉強しようと一念発起したんです。

(構成/本誌・松岡かすみ)

週刊朝日  2018年10月5日号より抜粋

著者プロフィールを見る
松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

松岡かすみの記事一覧はこちら