多いのは、人間関係と食事への意見。「新しく入居してきた人に対して、多少のいじめがある」「隣の部屋からのテレビの音が少しうるさい」「入居してすぐ、以前から住んでいる人に些細なことで注意されて嫌な思いをした」。食事への不満は「味つけが濃い、野菜をもっと増やしてほしい」「三度三度のことで無理もないが、食事がマンネリだ」。


 
 最近の有料老人ホームでは「体験入居」を実施している施設も多い。複数の施設を見学し、自分の舌で食事内容を確かめ、(1)スタッフの表情は?(2)ホーム内に嫌なにおいはしないか?(3)施設長はどんな人物か?(4)入居者の服装は?を知ることがホーム選びには重要だ。

■最悪は転居になる! ミスマッチを防ぐ

 入居するホームを十分に知ったつもりでも、入居後にミスマッチが起こることがある。介護・暮らしジャーナリストでNPO法人「パオッコ」理事長の太田差惠子さんは、「お金に余裕があって選択肢が多いとトラブルが起きやすい」と指摘する。たとえば、いくら費用が高いホームでも居室は自宅よりも狭くなる。夫婦入居の場合、一人の時間が少なくなりストレスを感じることもある。

「子どもは『両親は引き離してはいけない』と思い込むことが多い。しかし、健康状態やホームとの相性は夫婦間で違います。それぞれのニーズに合わせて別々に住んだほうがよい場合もあるのです」
 
 ミスマッチを防ぐには、原点に立ち戻って入居の目的を明確にすること。今すぐ介護が必要なのか、将来の介護に備えるのかによってニーズは異なる。現在健康な人が介護型に入ると自由度が低い生活に不満を感じることもある。反対に住宅型に入居し、介護が必要になって退去になる可能性もある。「本人も家族もすべて“想定内”にしておけば、大きなトラブルにはなりません」
 
 また病院の退院日が迫り、焦ってホームを探さないことも重要だ。覚えておきたいのは、自宅に帰るまでのリハビリ期間として入居できる「老人保健施設」。3カ月ほど利用できるところが多く、ホームを選ぶ時間稼ぎになる。

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ホーム選びは就活に似ている?