現役引退を表明する広島の新井貴浩 (c)朝日新聞社
現役引退を表明する広島の新井貴浩 (c)朝日新聞社

 広島の新井貴浩内野手(41)が9月5日、今季限りでの引退を発表した。チームはその日から3年ぶりの6連敗。12日にようやく抜け出したときに、「うれしい。続いていたから、かなり気にしていました」と語った。自らはその日、代打で出たが空振り三振。自分よりチームのことを、という姿勢がいかにも新井らしかった。

 現役生活20年で2200安打、ホームラン319本(5日現在)。選手会会長を務め、北京五輪で日本代表の4番を任された。プロとしての駆け出し時代を知る古参記者は愛情を込め、「あの下手くそがねぇ……」と振り返る。今や「試合に出ていなくてもいるだけでいい」と周囲が認めるほどの存在感だ。

「当時のスカウトによると、新井はスローイングが悪いから指名候補リストにすら入っていなかった。ドラフト直前、(出身大学の)駒大の関係者らが球団幹部に働きかけ、ようやく指名されたんです」(古参記者)

 そんな“コネ入団”のような負い目があったからか、新井は人一倍練習した。

「カープの選手はみなよく練習しますが、中でも新井は努力の見本のよう。それができたのは身体の強さがあったからですね」(同)

 当時を知るベテラン記者は「プロでは難しそうな選手を普通は指名しないけど、それをとって育てたのがカープだった。育成力があるんです」という。

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