「そこに、安倍さんの秘密があります。第1次安倍政権で途中退任し、失敗したから、みんなで守りたくなるタイプの殿様なのよ。安倍さんを支えてあげようという気を起こす、支えたくなる強さなんですよね。そういう意味で、安倍さんには空の部分がある。石破さんには空がないんだよね」(大下氏)

 だが、元共同通信記者で、自民党を中心に長年、政界を取材してきた野上忠興氏は手厳しい。

「安倍首相は穏やかなタイプではあります。ただ、自分の気にくわないことに直面すると、ぐっと我慢することができなくなるジコチュウの性分だというのは、幼少期から首相の世話をしてきた人の指摘です。元々、首相は父・晋太郎さんから『お前には政治家として必要な情がないし、相手の立場になって考えない』と再三言われています。とすれば、人間力がつく下地自体が、乏しかったということになります」

 石破氏は「正直、公正」のキャッチフレーズを掲げているが、これが仇になっていると大下氏は指摘する。

「安倍さんが第1次内閣で苦しかったときに辞めるべきと発言した。麻生さんが首相のときも、わざわざ本人に面と向かって辞めるべきと言った。その恨みを2人とも許してないですよ。二階(俊博)さんが派閥を作ったときにも派閥事務所を引き払って党でやりなさいと言ったりもした。権力にひるまない良さはあるけれど、敵を多く作りすぎた。だから、人がなかなか集まらない」

 では2人の政治家としての実行力はどうか。政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう評する。

「安倍さんが現職に返り咲いてから5年8カ月になるが、危機突破内閣や、国難突破解散と掲げているけれど、いつまでも突破できていない。また、働き方改革や異次元緩和といったスローガンが曖昧で検証できない。どういう結果が成功なのか、評価を定義することが難しい」

 一方で、石破氏の政策的な最大の弱点は「わかりにくさ」だという。

「思いが強すぎて何を言っているかわからない。たくさん話すことで、政策通であることをアピールしたいんでしょうが、話が長く、質問と答えがすりかわっている。YesかNoで答える質問にも、一言言わないと気がすまない性格。A41枚でわかりやすくが政治の基本。ただ側近議員対決であれば、石破さんのほうが政策立案能力は高い」

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