安倍首相との一騎討ちと見られるため、会見では、厳しく追求する質問はほとんど出なかった。無投票で総裁選がないという事態はつまらないという多くの思いがあるからかもしれない。

 石破氏と30年来の付き合いがあり、著書「石破茂の日本創生」のある作家の大下英治氏は、親しくしてきたがゆえに辛口で「本当は出馬表明がちょっと遅過ぎるね」などと本誌に語った。

「かなり前から総裁選に出るのが決まっていたんだから、もっと早く表明して、『安倍政権はこれでいいのか』と国民や党員に訴えるべきだった。遅くなった分、不利。今は大臣でもなんでもなく、政権からしばらく遠ざかっているんだから、主張が浸透するのに時間が足りない。永田町では安倍一強と言うけれど、みんな権力にひれ伏しているだけなんです。ポストが欲しいから媚びているだけ」

 テレビ局や新聞社が毎週行なっている世論調査で、「次の総理には誰がいいか」という質問項目では、毎回、石破氏、安倍首相、小泉進次郎筆頭副幹事長の三つどもえ。石破氏がトップのこともしばしばあり、国民からの人気は高い。

 石破氏が自民党総裁選への立候補するのは2008年、12年に続いて3回目。12年の総裁選では、党員・党友の地方票で165票、全体の55%をも獲得し、安倍首相を圧倒。安倍首相は石破氏の半分の87票だった。1位の石破氏と2位の安倍首相の決戦投票で、国会議員票を多く集めた首相が勝利した。

「この時は民主党政権で、自民党がまだ野党の時だったからね。石破さんの強い県は地元の鳥取県、山形県、徳島県、高知県の4つの県。こられの県ではすべての持ち票を獲得した。安倍さんは徹底して自分を批判する人を打ちのめす。今、この4つの県を警戒し、狙い打ちしているんです」(大下氏)

 総裁選は地方党員票(405票)と国会議員票(405票)とで決まる。安倍首相は国会議員票の8割弱を固めていて、石破派(20人)は竹下派が自主投票を表明し、竹下派参議院(21人)の支持を得た。その他5派閥と竹下派の衆議院議員の多くは安倍支持にまわる見通しだ。

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石破氏にとってのキーマンはあの人