「政治的に全く対する立場であった小泉純一郎総理は私を防衛庁長官に起用した。人事はかくあらねばならないと思いました」

 偉大な首相の一人というような口ぶりだった。

 それにしても、その他の立候補をとりざたされた候補たちはどうなってしまったのか。

「総裁選立候補を見送った岸田文雄政調会長は、もう、安倍さんから禅譲もしてもらえないと思います。安倍さんが勝負の時のギリギリまで逆らって出馬を模索したんだから。野田聖子総務相はこのままだと、出馬できる20人の推薦人が確保できないのではないか」(大下氏)

 圧倒的有利と言われる安倍首相の死角はないのか。石破氏の勝利の可能性はないのか。

「石破さんには首相になれる道筋として一つだけ望みがある。それは来年予定されている統一地方選で自民党が負け、夏の参院選でも自民党が大敗すると、安倍首相が退陣し、再び総裁選が行なわれるという可能性がある。もしそういう事態になれば、竹下派が再び一気に動き、石破政権が誕生するでしょう」(同前)

 そういう展開になるためにも、今回の総裁選は石破氏にとっては、とても大事なものになる。小泉元首相は3度目の総裁選で勝利した。何度か落ちることは経験値にもなると大下氏はいう。

「石破政権誕生のためには、今回できるだけいい勝負をしておく必要があるから、石破さんは必死だよ。地方票の半分くらい取っておく必要があるでしょう」

 一寸先は闇と言われる永田町。石破氏のロマンは開くのか。(本誌・上田耕司)

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