不動産はいつまでも資産価値がある……。こんな「土地神話」が崩れて久しいが、家は手放したくないという人が多い。高齢の親が住んでいる実家が将来空き家になりそうでも、なかなか処分できないものだ。でも、そろそろ「決断」したほうがいい。
首都圏に住む新潟市出身の50代半ばの女性は、実家をどうするかで悩んでいる。
同市にある実家には、90歳の母親が一人で暮らしていた。体も弱り生活に支障が出てきたことから、4年前に老人ホームに入った。実家には今、誰も住んでいない。母親となかなか顔を合わせることもできない。ときどき電話で様子をうかがうと、認知症かなと思わせるような言動が最近増えてきた。
「そろそろどうにかしないと」
そう思い始めていた矢先、昨年の台風で実家の瓦が飛び、近所の家を傷つけてしまった。近所の住民へのおわびのため久しぶりに戻ると、実家は雨漏りがするなど想像以上に傷んでいた。売却することも考えたが、母親は思い入れのある実家をまだ手放したくないようだ。当面、空き家の状態が続き、不安は消えない。
こんなケースが全国的に相次いでいる。日本には今、空き家が1千万戸近くあるとされる。総務省が5年に1度行う「住宅・土地統計調査」によると、空き家は直近の2013年で820万戸に上った。5年前より62万戸以上(8.3%)増え、20年前からほぼ倍増した。住宅全体に占める空き家の割合は13.5%で、上昇傾向だ。
少子高齢化が進んでも、住宅は毎年新たに供給されていて、空き家は今後さらに増える見通しだ。野村総合研究所は2033年には住宅全体の3割近くに達すると予測する。15年後には3軒に1軒近くが空き家になるのだ。住宅が余る時代がすぐそこまで来ている。
「誰も住まないような家なら一刻でも早く手放したほうがいい」
こう訴えるのは、不動産コンサルタントの長嶋修・さくら事務所会長だ。
「今後は持ち家比率の高い『団塊の世代』が今住んでいる家を離れて、より便利な場所に移ることが予想されます。そうなれば中古住宅がどんどん売りに出される。一方で、少子高齢化で買い手は少なくなっていきます。少しでも高く売るには、売りたいというライバルが増える前に、早めに決断したほうがいいでしょう」