日本では20~69歳の成人男性の約3人に1人は薄毛、いわゆる男性型脱毛症とされる(※写真はイメージ)
日本では20~69歳の成人男性の約3人に1人は薄毛、いわゆる男性型脱毛症とされる(※写真はイメージ)
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 最近髪の量が減ったかも……。漠然とした不安を抱えながらも、見て見ぬふりをしている人も多いだろう。早ければ10代後半から始まるという男性の薄毛(AGA)は、日本で1千万人を超えるという。昨今AGAという言葉をCMや広告で目にしない日はないが、巷で流れる情報は医学的に正しいのだろうか。薄毛の予兆となるサインや予防法について、専門医に話を聞いた。

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 日本では20~69歳の成人男性の約3人に1人は薄毛、いわゆる男性型脱毛症(AGA)とされる。太古の昔から多くの男性を悩ませてきたが、近年AGAを専門とするクリニックも増えている。

 AGAの現状について、大阪大学医学部皮膚・毛髪再生医学寄附講座特任教授で心斎橋いぬい皮フ科院長の乾 重樹医師はこう指摘する。

「AGAの診断率が上がり、また近年の薄毛への意識の高まりで患者数が増えているようにも感じますが、成人男性の約3分の1という総数はずっと変わっていないと思います」

■AGAによる抜け毛は皮脂の量と関係なし

 夏になると、帽子による蒸れや毛穴の皮脂が気になってくる。日々、抜け毛を予防すべく、シャンプーなどで頭皮の毛穴から皮脂をとり除くことに神経を使っている人も多いだろう。だが、AGAによる抜け毛は頭皮の皮脂の量とは関係がないと乾医師は言う。

「AGAによる薄毛は遺伝的影響と男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロン(DHT)による影響であることなどがわかっています。頭皮の皮脂が原因ではないので、皮脂をとるシャンプーなどはAGA予防には効果がないのです」

 女性にも男性ホルモンがあるため、少数だが女性のAGA患者もいる。しかし、そのほとんどは男性だ。

 AGAは“ハゲ方”に特徴がある。典型例は、前頭部の生え際や頭頂部の毛髪が薄くなってくる。では、なぜ薄くなるのだろうか。毛髪は、成長期→退行期→休止期というヘアサイクルを経て、抜けたり生えたりをくり返している。毛髪は地肌の中にある「毛包(もうほう)」という部分でつくられる。通常、毛髪が毛包から伸びていく成長期は2~6年だ。しかし、その期間が徐々に数カ月~1年程度に短くなっていく。次第に毛包がミニチュア化し、その毛包から生える毛は細く短くなっていくのだ。これがいわゆる薄毛の状態。短く細い抜け毛が増えたら要注意だ。

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