岩下志麻が告白「自分の中の母性と女優の間でうつっぽくなった時期も…」 (2/3) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)
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岩下志麻が告白「自分の中の母性と女優の間でうつっぽくなった時期も…」

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植草信和週刊朝日#ドラマ

岩下志麻さん(提供:岩下志麻事務所)

岩下志麻さん(提供:岩下志麻事務所)

 17歳のときに精神科医になりたいという志が、健康を害して頓挫。「気分転換のようなもの」という軽い気持ちでNHK「バス通り裏」に出演したことが女優人生の始まりだった。

 やがて松竹の巨匠監督木下恵介の目にとまり、「笛吹川」で映画デビュー。

 小津安二郎監督の「秋刀魚の味」に起用されて、松竹のみならず日本映画界の代表的清純派女優に成長する。初期の代表作のひとつ「五瓣の椿」では野村芳太郎監督の「岩下志麻を本格的な女優にする」という意図に応えて飛翔のときを迎える。

「それまでは与えられたセリフを憶えていただけでしたが、『いやこのセリフはこういうふうに言ったらどうなのかな』みたいな、別の考えが自分の中に浮かんで、それによって演技に対して今まで持っていた興味よりも幅が広がりました」

 演技に目ざめた岩下さんに恋の季節がおとずれる。

「乾いた湖」でコンビを組んだ篠田正浩監督と結婚。当時の映画界では女優の結婚は引退を意味していた。

「周囲の人の99パーセントから反対されました。周囲から猛反対されるので逆に『結婚しよう。それで駄目ならもともとそこまでの女優。結婚してさらにいい女優になろう』という決意で踏み切りました」

 この反骨精神、向日性こそが岩下さんの本質だ。

 やがてふたりは「表現社」という独立プロダクションを立ち上げて、夫唱婦随、独自の映画製作に邁進していく。その時期の岩下さんは、それまでの女優人生が助走に過ぎなかったと思わせる素晴らしい躍進を遂げる。

 それが篠田監督作品「心中天網島」における、おさんと小春という二役の演技だ。

「『心中天網島』は表現社の初めてのATG(日本アート・シアター・ギルド)との提携作品だったので、いい映画にして多くの人に見てもらいたいという意識が強くはたらき、作品に対する責任感のようなものを感じました。初めて自分で前売りチケットも売ったりしたんですよ。演技的には、おさんは人妻なのでお歯黒して声もアルトにしてリアルな話し方にしました。一方の小春は遊女ですから眉を細めに描いて白塗りにして、声も高めにしました」


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