脳卒中のメカニズム(c)朝日新聞社(週刊朝日 2018年3月16日号より)
脳卒中のメカニズム(c)朝日新聞社(週刊朝日 2018年3月16日号より)
血管が原因で起きる主な病気(週刊朝日 2018年3月16日号より)
血管が原因で起きる主な病気(週刊朝日 2018年3月16日号より)

 俳優の大杉漣さんは急性心不全のため66歳で亡くなった。循環器系の病気は命を左右しかねない。急死したり、重篤な後遺症を残したり……。その最大の原因は血管だ。

【図表でみる】血管が原因で起きる主な病気

 千葉県在住の主婦、吉原涼子さん(仮名・48歳)は昨年10月、当時50歳だった夫を亡くした。それまで大きな病気をしたことはなく、亡くなった日の朝もふだんと変わらない様子で出勤していた。勤務先の不動産関連会社で会議中、突然激しい胸の痛みを訴えて倒れた。救急車の中で心停止し、大学病院で蘇生術が施された。吉原さんも病院に駆けつけたが、回復することはなかった。

 病名は急性心筋梗塞。血流に乗せて心臓に酸素を届けている冠状動脈に血栓(血のかたまり)が詰まり、心臓の筋肉が死んでしまう病気だ。吉原さんの夫のように急死するケースも多い。

 日本人の死亡原因のトップはがんだが、2位の心疾患、4位の脳血管疾患、9位の大動脈瘤・大動脈解離など、「血管」が原因で引き起こされる病気が上位を占める。循環器疾患が専門の河野宏明医師(本大学大学院生命科学研究部教授)はこう話す。

「すべての臓器や組織は、酸素や栄養がなければ働くことができません。こうしたエネルギーを血流に乗せて届けてくれているのが『血管』です。血管にトラブルが起これば、つながっている多くの臓器の機能にまで影響を及ぼすことになる。とくに心臓や脳、肺といった命にかかわる臓器への影響は深刻です」

 血管の2大トラブルは「詰まり」と「破裂」だ。

 血管は酸素や栄養を臓器や組織に送り届ける動脈と、各所の老廃物を回収して心臓に戻ってくる静脈の大きく二つのルートに分けられる。動脈が詰まると、その先の臓器は“兵糧攻め”にあって働きが弱まり、やがて死滅する。

 心臓に向かう動脈が詰まる心筋梗塞はその代表格。心筋梗塞の一歩手前と言えるのが狭心症で、血管の一部がキュッと狭まり、流れが悪くなった状態だ。急に胸が痛み、苦しくなるなどの症状が表れる。安静にしていれば長くても15分程度で治まるため、ついつい放置してしまい、心筋梗塞に進行させてしまうことも少なくない。

 一方、脳に向かう血管が詰まれば、脳梗塞を発症する。脳の働きは、呼吸などの生命維持から、知能、運動、感覚に至るまで幅広い。詰まった血管に養われていた部分の脳細胞は、酸素不足が続けば死滅する。

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