林:蜷川さん、そのころはもう酸素吸入器をつけてらしたんじゃないですか。

溝端:そうです。吸入器つけて車いすに乗ってる人に「死ね!」と言われるという(笑)。家に帰るつもりが途中で噴水にはまってるときがありましたね。ちょっとしたノイローゼだったかもしれないです。

林:そんな大変なことがあったとは……。でも、何度も溝端さんを起用したのは、すごく認めていたからじゃないですか。

溝端:どうしようもない僕を見て、「どうにかしなきゃいけない」と思われたのかもしれません。蜷川さんの愛を感じます。もっとお仕事したかったです。

林:溝端さん、ずっと順風満帆なのかと思っていたら、いろいろ苦労されているんですね。

溝端:「ジュノンボーイ」というアイドルみたいな形でデビューしましたから、その恩恵にあずかって自分の身の丈に合わない役もたくさんやらせていただきました。いわゆる下積み時代がないのはありがたい半面、自分の弱点でもあるというか。周りの方に「顔がきれい」とほめていただけるのはうれしいですが、いろんな監督に「顔がきれいだから、役がない。はまらない」と言われましたね。

林:とくに男性は、「味がある」というタイプの俳優さんのほうが、役柄が多いかもしれませんね。映画もドラマも一クセあるものが多いし、そうでないと高校生向けの「壁ドン」映画になっちゃうし。

溝端:28歳という年齢は、重厚な作品にはちょっと若いし、青春恋愛モノに出るほど若くはない。僕ははやりの「塩顔」でもないし、かといって思いっきり昭和っぽいわけでもない。今は自分のアイデンティティーを見つけるために、もがく時期なんだと思いますね。

林:もうちょっと経って小じわが出てくると、それがいい味になりそう。

溝端:正直、早く年とりたいですね。

林:私も年の功でいろんな俳優さんを見てきましたけど、そういう悩みを持ちながら、一皮二皮むけて名優と呼ばれるようになるんですよ。阿部寛さんだって、昔は「メンズノンノの阿部ちゃん」だったんですから。

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