昨年来、ニールのアルバムの発売ラッシュが続いている。

 昨年9月には1976年録音の『ヒッチハイカー』が発表された。お蔵入りしている音源を公式発表してきた“アーカイヴ・シリーズ”の一枚だが、新たに“スペシャル・リリース・シリーズ”と銘打たれ、全曲ニール単独の弾き語りによる。「ハワイ」「ギヴ・ミー・ストレングス」は未発表曲。個人的な感情をむき出しにしたニールの切々とした歌唱がしみじみと味わい深いアルバムだ。

 同年8月には、バッファロー・スプリングフィールド時代からの初期10年間の足跡を集大成した『ディケイド~輝ける10年』(77年)のリマスター盤も出ている。

 そして12月には、今回紹介した『ザ・ヴィジター』を発売するとともに、インターネット上に「ニール・ヤング・アーカイヴス」(www.neilyoungarchives.com)を開設した。

 アーカイヴスでは、ニールの最初の録音であるスクワイヤーズのシングル「ザ・サルタン/オーロラ」(63年)から最新作までのさまざまな音源を聞くことができる。未発表のままになっているアルバムのフォルダーもある。現在は空白のままだが、今後、順次公開されていくようだ。76年録音として“ODEON BUDAKON”(原文ママ)と題された未発表アルバムのフォルダーがある。どうやら“BUDAKON”は“BUDOKAN”の表記間違いらしく、同年のニールの初来日時の武道館公演を収録したものらしい。

 そういえば数年前にアメリカ在住の知人から連絡があり、ニールの依頼として、76年の来日時の公演の切符やポスターを探していると聞いた。当時、私がニールに取材した際の音声テープを持っていないか、とも尋ねられた。

 その際、ニール側が初来日公演の全日程を収録したテープ、フィルムを持っていることを知った。今回の“ODEON BUDAKON”(同)の発表は楽しみだが、さて、いつのことになるのやら。

 昨年、来日公演の話が持ち上がりながら実現しなかった。今年こそ!(音楽評論家・小倉エージ)

●『ザ・ヴィジター』(ワーナーミュージック WPCR-17968)

著者プロフィールを見る
小倉エージ

小倉エージ

小倉エージ(おぐら・えーじ)/1946年、神戸市生まれ。音楽評論家。洋邦問わずポピュラーミュージックに詳しい。69年URCレコードに勤務。音楽雑誌「ニュー・ミュージック・マガジン(現・ミュージックマガジン)」の創刊にも携わった。文化庁の芸術祭、芸術選奨の審査員を担当

小倉エージの記事一覧はこちら