人間、死ぬ時期は選べない。今や100歳まで生きることも珍しくない。予想以上に生きることを「長生きリスク」というが、2025年問題は、日本全体が長生きリスクにさらされていると、とらえることもできる。

 しかし、長寿化は容易に予想できたことである。前もって準備できたはずだが、年金・医療・介護どれをとっても、備えはおろか問題が深刻化している。

 介護現場を襲っているのは、慢性的な人手不足だ。国際医療福祉大学の高橋泰教授が言う。

「過疎地と大都市部の両方で人手が足りていません。過疎地は、そもそもケアする若い人がいない、大都市部は高齢者が増えるスピードに追いつかず、かつ他業種との取り合いになり、給与が低いことなどで人が集まりません。人手不足は想像を絶するスピードで進んでいて、『介護崩壊』が起きてもおかしくありません」

 高橋教授は、早晩、介護施設に定められた人員基準を満たすことができずに閉鎖に追い込まれる施設が出てくるとみている。

「賃金競争にはまってしまうと介護は分が悪くなります。従って、少ない人員でできるように介護の効率化を急ぐべきです」

 と言うが、間に合うかどうか。

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