地方の過疎地では、本物の「医療崩壊」が始まる。上理事長によると、70~80歳の医師が一人で地域医療を支えているケースがいっぱいあるという。

「仮にその医師が亡くなったら、その地域は即、アウトです」

 年金は一見、落ち着いているように見えるが、遅々として進んでいないことがある。現在の受給者に対する給付抑制、つまりは年金額の切り下げだ。

 保険料の14年連続の値上げは17年度で終了し、「65歳」への支給開始年齢の引き上げもスケジュールどおりに進んでいる。高齢化対策の三本柱のうち、給付抑制だけが進んでいないのだ。

「マクロ経済スライド」という「道具」はできている。物価が上昇したら連動して年金も上がるルールを一時凍結、物価が上昇するほどには年金額を上げないことで実質価値を下げていく制度だ。

 ところが、デフレで肝心の物価が上がらず、制度は04年にできたのに、15年度に1回、発動されただけだ。

 名目の年金額は、できるだけ減らないような仕組みになっていて、昨年度に制度が一部改正されたが、その仕組みはしっかり残った。専門家の間ではマイナス改定を容認し、物価がどう動いても制度を完全発動するように求める声が強い。(本誌・首藤由之)

週刊朝日 2018年1月5-12日合併号より抜粋

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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