医療では、病院の経営危機が問題になりそうだ。

 日本の医療は、公的な医療保険を使う限り、費用の「診療報酬」はすべて国が価格を決めている。来年度は改定の年で、今回の折衝で全体は前年度比1.19%下がるが、診察料や入院料などの「本体」部分は0.55%上がることとなった。

 日本医師会の影響力が大きいとされるが、医療ガバナンス研究所の上昌広理事長によると、「本体」全体よりも、春までに決まる個々の医療行為への点数(価格)付けを注目しているという。

「小泉政権以来、社会保障費の自然増抑制、つまりは医療費カットが始まりましたが、点数付けを見ていると、病院で行う医療行為のカットが目立ちます。点数が減ると、病院にとっては収入減になります」

 一方でコストは上昇する一方だ。経費の6~7割は人件費が占めるが、例えば看護師の平均年収は473万円と高い。人手不足が顕著な都内では、夜勤手当があると1年目から500万円を超えるという。

「これではソロバンが合いません。今後はコストの高いところ、つまり東京の病院から破綻するところが出てくるでしょう。そして、それは全国の都市部へ広がっていく」

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