とはいえ、そこは各年代代表の経験者だ。稲本が暴れたW杯の舞台は意識している。昨年11月に初めて日本代表に選ばれたが、試合出場はなく終わった。「呼ばれるだけでは意味がない」とガンバで武器を磨いてきた。その結果、日本代表での初ゴールは、相手のチェックをはじき飛ばして決めた渾身の右足シュート。「頭の中が真っ白になった」という一発で、チームとしても個人としてもロシア行きを決定づけた。

 メンタルもずぶとい。日本中が注目した初スタメンにも「普通の試合と同じ感じで入れた」。昨年のJリーグ開幕前に行われた新人研修での逸話がある。チェアマンの講話中に机に突っ伏して熟睡。「怒られたのがチェアマンだとあとで知りました」とけろりとしていたという。

 まさに「大器」。来年6月にロシアである本大会のときには、欧州クラブにいても不思議はない。(本誌・直木詩帆、西岡千史、太田サトル、小泉耕平/横田一)

週刊朝日  2017年9月15日号