落語で泣く2人…春風亭一之輔が寄席で見た“神様”とは? (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

落語で泣く2人…春風亭一之輔が寄席で見た“神様”とは?

連載「ああ、それ私よく知ってます。」

このエントリーをはてなブックマークに追加

人間ってメチャクチャに怒ると大量に発汗するんですね…(※写真はイメージ)

人間ってメチャクチャに怒ると大量に発汗するんですね…(※写真はイメージ)

 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は、「神様」。

*  *  *
 私が前座のとき。某寄席で働いていると、扉をガンガン叩く音がしました。おそるおそる「どちらさまですか?」と開けると、50歳くらいの眼鏡をかけた、もたいまさこ風のご婦人が、

「さっき落語やってたTさん、まだいらっしゃるっ!?」

 と飛び込んできました。

 怒ってました。冬なのに水をかぶったように汗だくでした。人間ってメチャクチャに怒ると大量に発汗するんですかね? 怒りあまって血の気が引くってのはウソ。

「……まだいますけど、失礼ですがどちらさまですか?」

 と聞けば、

「名前なんかどーでもいーんですっ!!」

私「師匠、『名前なんかどーでもいーんですっ!!』と言いながらメチャクチャ怒ってる、ビショビショのおばさんが『出てこい!』って言ってますけど……」
T師匠「……嫌な予感しかしないな。『いない』って言っ……え? 『いる』って言った? バカっ!! そういうときは『もう帰りました』って言えよ!!」
私「師匠のファンかもしれないと思って(半笑)」
T「……ファンが怒るか?」

 T師匠はその後、楽屋口でビショビショのご婦人に怒鳴られ続けました。

 師匠のネタは『宗論』(浄土真宗を信仰する親父とキリスト教徒の息子の言い争いの噺)。内容に腹を立てた敬虔なクリスチャンのお客様だったようです。

T「『あなたのファンだったのに、ガッカリです!』だって……」
私「やっぱりファンでしたか!」
T「『明烏とか紺屋高尾が聴きたかった』って言われたよ」
私「女郎買いの噺はいいんですね、あの人」

 しかし、噺家を16年やってますが、『宗論』でここまで怒る人と怒られてる人を見たのは初めて。「もう二度とやらないように!!」とまで言われて、ちょっと気の毒な師匠でした。

「あそこまで言われたら、悔しいけどちょっと控えるわ」

 とうなだれてました。仲間内にもその噂が広がり「Tは災難だったな」が大方の楽屋の意見。


トップにもどる 週刊朝日記事一覧

続きを読む

関連記事関連記事

このエントリーをはてなブックマークに追加
あわせて読みたい あわせて読みたい