墓や葬儀にかかる総額(週刊朝日 2017年9月1日号より)
墓や葬儀にかかる総額(週刊朝日 2017年9月1日号より)

 最近は葬儀をせずに、火葬だけ行う「直葬」が増えている。日本エンディングサポート協会理事長の佐々木悦子さんのところに相談に訪れた都内の寺の檀家の話だ。火葬だけ済ませ、遺骨を持って、お寺に行くと、「なぜオレを呼ばなかったのか。葬儀をやり直せ」となった。「じゃあ、出ます」と言うと、「離檀料を200万円払え」となってしまった。最終的に請求は取り下げられたが、「火葬式の前にお寺に行き、こういう事情で費用が捻出できないので、と一言住職に声をかけていれば良かったと思います。それだけで、お寺の対応は違っていたでしょう」と佐々木さんは話す。もめてしまったら、「仏教情報センターに相談するのも一つの方法」と教えてくれた。

 寺はべらぼうに高い金額を請求する、と安易に考えないほうがいい。朝に晩にお経をあげ、檀家のためにやってきたことが突然裏切られたときのやるせなさ。だから、「離檀料」という形でしか抵抗できないのかもしれない。

「お寺の立場からすると、今まで世話をしてきたという感覚がある。亡くなったときの魂を赤ん坊とすると、お寺は、赤ちゃんのときからずっと『育ててきた』という思いがあるのではないでしょうか」(佐々木さん)

 都市部では宗教離れも進む。

「地方と都市部では、感覚が違いすぎる」(同)。寺と檀家の間にも思いの差が出てきてしまう。心穏やかに、気持ちよく墓じまいを行うために、業者に頼むのも手だ。墓の移転実績が8千件以上というメモリアルアートの大野屋(東京都新宿区)は、3年前に「お墓の引越しおまかせサービス」を開始。高齢で運転ができないなどの理由から要望が高かった「遺骨の移動」作業も要望にあわせて代行する。

 墓石を撤去すれば、出てくるのは「遺骨」だ。さあ、これをどうするか。選択肢の一つが「海洋散骨」。海が好きな人が「子どもたちに海を見るたび思い出してほしい」と依頼するケースもあれば、墓以外の選択肢がこれしかなかったから、と選ぶ人もいる。

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