「墓じまいは本当に大変です。お金もかかるし、体力も気力も必要です。お墓がある市区町村の役所まで足を運ぶなど手続きも面倒。墓を新たにつくるとなると、さらに大変」(佐々木さん)

 墓じまいとは、墓石を撤去し、更地にすることを指す。新たな土地に墓を移すこともあれば(改葬)、閉じて「墓はもうつくらない」ということもある。

 厚生労働省によれば2015年度の改葬件数は9万1567件で、前年度から7993件も増えている。

 高齢者の生活問題や葬送問題を研究する第一生命経済研究所の主席研究員・小谷みどりさんは言う。

「たとえ別の場に移したとしても、その墓を見る人がいない。だから閉める。それが『墓じまい』。ここ数年増えていると思います」

 子ども世代の人数は減り、地方にある墓の処理に困る人は増え、寺は無縁墓の扱いに頭を悩ませ、寺の存続にも危機感を募らせる。こんな時代には墓を維持することも閉めることも厳しい。

 実際に法外な離檀料を請求された人も多い。国民生活センターでは、70代の女性が遠くにある菩提寺まで墓参りに行けないから遺骨を近くの合同納骨堂に移したいと問い合わせたら250万円請求されたという事例が紹介されている。担当者によれば、離檀料を請求されて、もめる話は多く、昨秋には計2千万円も請求された相談があったという。

 前出の法月さんは、静岡市内にある母親の実家が代々持つ墓の今後に悩んでいた。母親は7人兄妹で、長男には娘しかおらず、継ぐ予定もない。

 守れる人がいるうちにと、叔母夫婦が、住職に永代供養墓への変更の相談に出かけた。すると住職は、

「では、300万円払ってください」

 その金額の根拠は、

「もしこのままこの墓を維持していけば、それぐらいのお布施を払うはずでしょうから」

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