永代供養にするだけであれば、ここまでの費用はかからない。明らかに高額な離檀料が含まれていると感じた法月さんは、静岡市内の寺を見て回り、「先祖代々すべてのお骨を持ってきても60万円で永代供養」という寺を見つけた。しかしそこは駅から遠く、交通の便も悪い。高齢者が墓参りに行く立地としては厳しく、しかも墓石の撤去費(2基分)に30万円かかることや離檀の際のお布施代を合わせると、どのみち100万円ほどかかる。であれば、これまでの寺で永代供養墓にしたほうがいいのではないか。そう考え、300万円を請求してきた住職との「値下げ交渉」に臨むことに。交渉には、度胸のある三女の叔母(当時75歳)があたることにし、これまでお世話になった住職に、誠意を見せながら、こう言ったという。

「姉妹で精いっぱい集めても、150万円しか工面ができませんでした。大変申し訳ありませんが、これで墓石の撤去代も含めてなんとかしていただけませんでしょうか」

 すると住職は、

「よろしいでしょう」

 とあっさり承諾した。

 提案金額を150万円にしたのは、彼女たちが積み立ててきた「姉妹基金」が200万円ほどあったからだ。これがあるうちに墓を何とかしたかった。

「最初の300万円は何だったんでしょうね(笑)」

 法月さんは、費用に限度があれば正直に言ったほうがいいと言う。さらに、「事前にリサーチし、交渉決裂時の遺骨の行き先を確保しておくことが大事」と話す。この体験をもとに、墓に悩む人のための情報サイト「お墓はなくてもだいじょうぶ」を運営。ガイドブックを作成し、無料で配布している。

週刊朝日 2017年9月1日号より抜粋