
人口が減り、墓を維持することが年々難しくなる。もはやひとごとではあるまい。墓じまいしようか。費用はいくらかかるのか。事例を示しながら、みなさんと考えていきます。墓、どうしますか。
「お墓は無理しなくていいんじゃないの」
神奈川県在住の女性(57)は、昨年他界した母親の納骨のために、実家のある岩手県内の寺を訪れると、住職からこう言われた。
「遠いし将来大変でしょう。無縁になる可能性があれば、閉めたほうがいいんじゃない? 離檀料も要らない。お布施だけでいいから」
女性は勧められるまま、墓を閉めた。墓から取り出した父親の遺骨と合わせ、両親の遺骨で手元供養のダイヤモンドを作った。このエピソードを教えてくれた、加工請負のアルゴダンザ(本社・スイス)・ジャパンの法月(のりづき)雅喜さんは言う。
「なぜ檀家離れを食い止めたいはずの寺がそのような話をしたか疑問です。ですが、年間の管理料も払わず、無縁化した墓が増えて、寺を悩ませている事情があるのかもしれない」
自腹で墓石の撤去代を負担するぐらいなら、檀家と連絡がつくうちに請求したいということなのか。
日本エンディングサポート協会理事長の佐々木悦子さんによれば、墓石の撤去代金は、1平方メートルあたり5万~15万円。一般的な寺の年間管理料は、6千円から2万円。このほかに、法事のたびに支払う「お布施」や、強制的に請求される寄付金など、墓を維持するのに費用はかかる。中でも厄介なのは、突然請求される寄付金だろう。
「寺を修繕しますから、寄付金100万円包んでください」と言われた60代男性は、「そんな金額払えない」と断ると、「分割でいいです」と返されたという。
地方にある墓で、子どもたちからは「もうそこには帰らないから」と、暗に墓じまいを求められているようだが、自分の代でそうすることに抵抗がある。
協会には60代を中心に「ある程度元気で、経済力があるうちに」と墓じまいの相談が多く寄せられる。