藤岡隼太アマと対局する藤井聡太四段=17日午後2時、大阪市福島区の関西将棋会館、安冨良弘撮影 (c)朝日新聞社
藤岡隼太アマと対局する藤井聡太四段=17日午後2時、大阪市福島区の関西将棋会館、安冨良弘撮影 (c)朝日新聞社

 将棋界で、14歳の中学生棋士が前代未聞の快進撃を続けている。愛知県瀬戸市在住の藤井聡太四段。17日、プロ初戦からの連勝を「27」に伸ばした。最近は対局の度にテレビで特集が組まれ、関連グッズは発売開始早々に完売。「藤井フィーバー」とも言える社会現象になっている。

 17日、藤井四段は大阪市の関西将棋会館で開かれたプロアマ戦で、学生名人の東京大学1年の藤岡隼太さん(19)と対戦。開始から1時間44分で勝負が決まった。藤井四段は、テレビカメラや記者らに囲まれながらも「ここまで連勝できて、幸運です」と落ち着いた口調で語った。

 将棋ファン、そして棋士たちを驚かせているのが、プロ入り後、無敗のまま勝ち続けている点だ。4月にデビュー戦からの11連勝新記録を作ったのは序の口で、新人に限らない連勝記録「28」まであと一つと迫った。30年前にこの記録を作った神谷広志八段(56)は「映画かマンガのよう。現実にこんなことが起きるのが信じられない」と驚く。今月に入り、扇子やクリアファイルといったグッズが販売されると東西の将棋会館には行列ができ、あっという間に売り切れた。

 藤井四段は昨年、棋士養成機関「奨励会」をわずか4年で卒業し、史上最年少の14歳2カ月で、棋士として認められる四段になった。インターネットテレビ局のお好み対局で、羽生善治三冠(46)に勝ったことも話題に。羽生三冠は「新人とは思えないくらいの落ち着き」と評した。

 藤井四段の最大の武器は、勝敗に直結する終盤戦での読みの鋭さだ。玉将の捕まえ方を考える「詰将棋」を数多く解くことで鍛えられた。最近は、研究に将棋ソフトを活用しており、序中盤の力も急上昇。棋士たちは「弱点が見当たらない」と口をそろえる。

 普段は名古屋市の中高一貫校に通う中学3年生。部活には入っておらず、将棋中心の生活だが、根を詰めて打ち込んでいるという様子は見られない。学校から帰宅後は朝日新聞を読むのが日課。好きな作家は沢木耕太郎や司馬遼太郎という読書家で、好きなテレビ番組は「ブラタモリ」という。「自分では、そこまで将棋の勉強をしたという実感がない。将棋が好きだからやってこられたのかな」。あくまで自然体の中学生は、これからも私たちの想像を超える活躍を見せてくれそうだ。

 連勝記録歴代1位タイをかけた対局は21日。王将戦1次予選で、澤田真吾六段と対戦する。(朝日新聞記者・村瀬信也)

週刊朝日 6月30日号