"三菱東京UFJ銀行の頭取交代会見で、三毛兼承新頭取(右)と三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長 (c)朝日新聞社"

 三菱グループに異変が起きている。三菱東京UFJ銀行は頭取が就任1年で交代し、三菱重工業も生産現場での失態が続く。三菱商事とともに、グループの「御三家」と呼ばれるうちの2社の危機。巨大財閥に何が起きているのか。ジャーナリストの井上久男氏が探る。

 5月24日、三菱東京UFJ銀行の小山田隆頭取が就任1年余りで退任すると発表された。後任はグループ内の他社に転出予定だった三毛兼承(みけかねつぐ)副頭取。小山田氏は4月に全国銀行協会会長に就いたばかりで、突然の交代劇が話題を呼んだ。

「三菱東京UFJ銀行の行名から『東京』を取ることについて、OBから反発を受けた。生真面目な小山田頭取は精神的に参って、仕事を続けられなくなった」

 三菱グループの企業でつくる「金曜会」の関係者はこう話す。合併前の旧東京銀行は、国内唯一の外国為替銀行として海外で強い知名度があった。伝統ある名前を外すことであつれきが大きかった、との見方だ。

 三菱UFJフィナンシャル・グループの広報担当者は編集部の取材に対し、「あくまで健康上の理由。それ以外にコメントすることはない」と説明する。

 また、メガバンク関係者は「グループの再編など大きな戦略を巡って、持ち株会社トップの平野信行社長との間に摩擦があったのではないか」と指摘する。真相は謎に包まれたままだが、トップ人事のごたごたは、いずれ本業に影響が出るのが企業社会の常だ。

 銀行以上に大きく揺らぐのが、巨艦・三菱重工業の経営。銀行、重工、三菱商事の「御三家」のうち、2社が苦境にあえいでいる。

 重工は、社運をかけた50年ぶりの純国産航空機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」で5度の納期延長の失態を重ねた。造船業でも豪華客船の製造に手間取り、1千億円の受注に対して累計2500億円超の特別損失を計上した。

 2017年3月期決算は、売上高が前期比約3%減の約3.9兆円、営業利益がほぼ半減の1505億円。本業のもうけを示す営業利益が半減したのは、四つの事業領域(ドメイン)のなかで、「防衛・宇宙」を除く3ドメインで減益となったからだ。

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