「今の築地市場の店舗は屋根はあるものの半屋外にあり、敷地を出入りするトラックの排ガスや、カラスやカモメのフンなどに食材がさらされるリスクがある。現代の市場は豊洲のように流通ルートが建物で密閉され、温度管理も徹底されたかたちが主流となってきており、国が制度化しようとしている国際的な衛生基準も満たしやすい。今の築地のままでは、国際レベルの基準が求められる選手村の食材から除外されてしまう恐れがあるんです」

 確かに、昨年12月には厚生労働省の検討会が、国際的な食品衛生管理基準である「HACCP(ハサップ)」の国内での制度化を提唱するなど、衛生面で食品業者に求められる要求は高まっている。豊洲市場のような最新設備のほうが、業者はこうした基準を満たしやすいという。ただ、小島氏も8日の市場内での会合で築地再整備案の詳細を示し、温度管理や害獣・害虫対策など衛生管理の機能を向上させると説明した。

 東京五輪組織委に問い合わせると「五輪期間中の食品流通の仕組みを含む飲食の戦略はまだ計画中。個別具体的なことにお答えできる段階ではない」(戦略広報課)とのことだった。

 もちろん、3月19日公表の調査結果で地下水から環境基準の最大100倍のベンゼンなどが検出された豊洲市場への移転も反対論が根強く、実現のハードルは高い。『築地移転の闇をひらく』の共著者の一人、水谷和子氏はこう語る。

「都は今まで『汚染は除去されている』と都民にウソをつき続けてきたわけで、誰に責任があるのかの検証も不十分なまま、なし崩し的に移転していいはずがない。また、交通の便や構内の動線に問題がある豊洲市場では、業者のランニングコストが高くなる。やめていく人が出て業者の数が減るほど、設備維持のための1人当たりの負担額が増えるという悪循環に陥る。築地での再整備を検討するほうが現実的です」

 小池氏はこれまで、移転の是非について踏み込んだ発言はしていない。前出の小島氏が築地現地再整備案について業者と行った会合について事前にコメントを求められても、

「(小島氏が)専門委員として調査研究の一環として行うと聞いている。市場のあり方戦略本部そのものではない」

 と、やや距離を置いた言い方をするのみ。本心はどこにあるのか。小池氏を中心とした地域政党・都民ファーストの会の音喜多駿幹事長はこう語る。

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