トランプ氏のNPDを懸念する精神科医が増える一方で、それに異議を唱える専門家もいる。デューク大学のアレン・フランシス名誉教授は、「トランプ氏の自己愛の強さは世界的かもしれないが、それは彼が精神障害であることを意味しない。その前提条件となる精神的な苦痛を感じていないからだ」という。

 しかし、メイヤー医師は「(トランプ氏は)苦痛を感じていると思う」と反論する。「夜中もツイッターで反撃しているのをみると、批判に対してかなり苛立ち、精神的に参っているのではないかと想像します。おそらく、周囲の人たちが彼の怒りを鎮めようと努めているのでしょう」

 ただ、たとえトランプ氏が精神障害だとしても、それだけで「大統領として不適格」ということはできない。過去にもうつ病や双極性障害などを抱えた大統領はいたからである。しかし、トランプ氏の問題は、自身の精神不安定性が米国の言論の自由や民主主義などを危険にさらすと懸念されていることだ。

 長年共和党員だったという元控訴裁判事はこう語る。

「トランプ氏は米国の基本的な価値や常識的な礼儀を心得ていないように思える。意見が異なる人を片っ端から攻撃し、ツイッターで政策を発表する。このような人物が大統領の座に居座り続けるのは危険すぎます」

 結局、トランプ氏が大統領として適格かどうかは、最終的に国民が判断することだ。世論の圧力が高まれば、副大統領や閣僚、議会が行動を起こすことになるだろう。議会ではすでに動きが出ている。民主党のアール・ブルーメナウアー下院議員は2月半ば、「職務不能を理由に大統領を解任し、副大統領を代理に据える手続き」を定めた憲法修正第25条の適用に備える会を立ち上げた。この条項には「副大統領と閣僚の過半数が“大統領は職務上の権限と義務を遂行できない”と判断した場合、副大統領が代行する」と明記されている。同議員は「トランプ氏は就任式の参加者数を誇張し、得票数で負けたのは不正が行われたからだなどと根拠のない主張を繰り返している。妄想症で偏執病の大統領には本条項が必要になると思います」と述べた。

 他に「トランプ解任」の方法として、可能性が高いのは弾劾だ。憲法第2条は「反逆罪、収賄罪、重罪または軽罪で弾劾訴追を受け、有罪となった大統領は罷免される」と規定している。

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