牛肉も地域性豊かな食材だ (c)朝日新聞社
牛肉も地域性豊かな食材だ (c)朝日新聞社

 最近、コンビニなどで地域限定の食品を数多く見かけませんか。全国チェーンの大手流通企業も、食が地域に根ざした文化であることに注目し、使う食材や味付けの違いに気を配っています。では、どんな地域差があるのでしょうか。総務省の「家計調査」をひもとくと、食の県民性が浮かび上がります。

 ほおばると、ジューシーな肉汁が広がる中華まん。東京の老舗・新宿中村屋は「肉まん」と呼び、大阪名物・551蓬莱は「豚まん」と呼ぶ。なぜ違うのか。家計調査の結果から、ヒントが浮かび上がる。

 牛肉の購入額上位は大津市、奈良市、京都市など近畿地方がずらり。一方で、豚肉は横浜市、さいたま市など関東が並ぶ。新宿中村屋の広報担当者は「関東では豚肉がよく食べられ、肉と言えば豚肉」という。

『都道府県別ヒット商品の法則』などの著書があり、県民性に詳しい矢野新一さん(68)はこう話す。

「西日本では古くから農作業などに牛が多く使われ、東日本では馬が使われた。馬は肉が少なく、代わりに豚が食べられてきました」

 牛肉と豚肉の消費量を地域別にみると東日本は豚肉が、西日本は牛肉が好まれている。

 東日本のなかで、山形市だけ牛肉の消費が多いのはなぜか。「山形はかつて、西廻海運で関西地域と強く結びついた歴史がある」と矢野さんは説明する。

 山形の牛肉好きを表すのが芋煮会。河川敷などに集まり、肉や芋が具材の鍋を囲む東北の秋の風物詩だ。福島や宮城は主に豚肉を使うが、山形は牛肉。家計調査をみると、山形市の昨年10月の牛肉購入額は全国の1.6倍、東北平均の2.3倍。芋煮会のため、牛肉を買い込むのだろうか。

 ただ、同じ山形県内でも庄内地域は豚肉の芋煮が主流。家計調査の結果は県庁所在市のデータだから、山形市の傾向が数値に出る。

「知らない人が意外に多いですが、肉じゃがも関東と関西で違いますよ」と矢野さん。関東は豚肉、関西は牛肉を使うというわけだ。

 企業もこうした食文化の違いに注目する。セブン&アイ・ホールディングスは14年8月から、地域別の肉じゃがを売る。甲信越・東海より東側で豚肉を使った商品を売り、北陸・近畿以西は牛肉の製品。同社広報によると、変更前後の1週間の販売数を比べると、約2倍に増えたという。

 魚の好みも東西で違う。

 マグロの上位は東日本が多く、下位は西日本が多い。タイは西日本が上位。東日本は赤身、西日本は白身の魚が人気のようだ。

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