作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。北原氏は、森友学園問題の渦中にある安倍昭恵氏の発言を振り返り、日本を案じる。

*  *  *

 大統領弾劾にまで発展したソウルの市民デモは、若者の活躍が目立った。特に崔順実の娘が、名門大学に不正入学していたことは、苛烈な受験戦争に苦しむ韓国の若者たちの怒りを爆発させたのだ。そんな韓国のデモの様子を、日本はどこか冷めた調子で報道してきたが、もう、私たちだって、きちんと怒るべき時だろう。総理夫妻との関係が疑われる学校法人問題だ。

 国有地の激安ディスカウントからはじまり、埋設物を全て掘り出してない問題や、「安倍総理がんばれ!」と運動会で叫ぶ園児たちの衝撃映像、発言がどんどん変化していく総理大臣の様子等々メディアもじりじりと事実を突き詰めている。

 はっきり言って、親友の娘の不正入学どころじゃない。納税者がマジギレする時だ。8億のディスカウントって、何だよ!?

 安倍昭恵さんの顔が、今回、朴槿恵大統領にかぶった。笑っているように見えるが無表情にも見える。表情からは、何を考えているかはわからない。今、政権がゆらぎかねない事態に責任を感じてるよね……と昭恵さんのFBをのぞいたら、報道が過熱しはじめた2月26日の記述がこれだ。

「魚座の新月。全てを最善として受け入れ、大きな流れにゆだねる」

 すげー。神道じゃなくて占星術で悟り入ってるよ。

 
 昭恵さんが2014年からはじめた首相公邸CH.というインターネット番組を見た。「安倍昭恵の幸せのカタチ」という、毎回ゲストを迎えて対談している番組だ。第1回のゲストが電撃ネットワークというのも謎なんだけど、15年7月17日で更新は止まっていて、最後は歌手の相川七瀬さんだった。

 この番組、名前の通り首相公邸内で撮影しているらしい。番組のはじまりは、軽い調子で、こんなナレーションからはじまる。

「日本の中心地ここ総理大臣公邸。いま、この場所で、日本の歴史上初めてのことが行われている」

 日本の中心はいつから、総理の家になったんでしょう……という強烈な違和感と、芸能人を公邸に招いて「幸せ」を語るなんて確かに前代未聞かも……と、壮大な開き直りに言葉を失う。特に神道について語る相川さんとの回は興味深かった。昭恵さんは、安倍さんが07年に退陣した後、傷ついた心を癒やすために神社巡りをして「日本は神道だ」と目覚めたらしい。またイラクに自衛隊を派遣した時、サマワの女性たちを日本に招いたエピソードを披露していた。サマワの女性たちが伊勢神宮を「天国」と言ったのだと。

「(イスラム教の)男性たちがジハードといって天国を求めて戦争して死んでいく。でも実際に死ななくても天国はこの地球上にあったんだ」と。

 公邸でスピリチュアルな星占いして、伊勢神宮を天国と誇らしげに語る。超カルト集団に「日本の中心」が乗っ取られているんじゃないかと不安な気持ちになる。闇は想像以上に深いかも。

週刊朝日 2017年3月17日号

著者プロフィールを見る
北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

北原みのりの記事一覧はこちら