写真=MANA 野元学/1988年よりハワイを拠点にフォトグラファーとしての活動を始める。現在は世界自然遺産の小笠原諸島父島に在住、ハワイ 、タヒチ、小笠原など地球をフィールドに撮影を続けている。http://mananomoto.com
写真=MANA 野元学/1988年よりハワイを拠点にフォトグラファーとしての活動を始める。現在は世界自然遺産の小笠原諸島父島に在住、ハワイ 、タヒチ、小笠原など地球をフィールドに撮影を続けている。http://mananomoto.com
写真=MANA 野元学
写真=MANA 野元学
写真=MANA 野元学
写真=MANA 野元学

 ハワイ島のキラウエア火山は、1983年1月にプウ・オオ火口で始まった噴火以来、34年にわたって活動し続けている。

 2016年大晦日の午後2時45分(現地時間)、火山東側に位置するカモクナの海岸で、溶岩の大規模崩落が発生した。崩落した面積は25エーカー(約10万平方メートル)あまり。東京ドーム2個分というから、スケールの大きさに驚かされる。

 溶岩流は現在も海になだれ落ち、もうもうと水蒸気を立てながら、冷えて固まることで陸地を広げ続けている。

 その様子を写真にとらえたフォトグラファーのMANA野元学さんに、撮影時の状況を聞いた。

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 まだ夜も明けない真っ暗な中、ハワイ島の東海岸にある小さなボートランプから船を下ろして、溶岩ツアーは始まった。地元で生まれ育ったハワイアンのキャプテンが操船する小さな船は、真っ暗な海を進んで行く。30分ほどボートを走らせると、遠くに赤い灯のようなものが見えてきた。それが海に流れ込む溶岩だった。

 この日はいつもとは違う風が吹いていて、溶岩が流れ込むビューポイントに近づくにつれ、湿気を帯びた風が纏わりついてくる。

 やがて、周りも見えないほど真っ白な水蒸気に包み込まれた。それを抜けると、海に流れ込む真っ赤な溶岩が現れた。闇の中で不気味なほどに赤い溶岩は、海水に触れモクモクと白い水蒸気を絶え間なく吹き上げている。波が来るたびに、さらに大きく激しく水蒸気が上がる。海水で急激に冷やされた溶岩は時折激しく飛び散り、ボートのすぐ側まで飛んでくる。まるで火花を散らしながら爆発しているようだ。サービス精神旺盛なキャプテンは、こちらのハラハラする気持ちなど関係ないかのように、どんどんと溶岩流に近づいて行く。

 広角と望遠の2台のカメラを用意していたが、溶岩流に最接近した時には、全景を収めるのに超広角レンズに交換しなければならないほどだった。熱気がボートまで押し寄せ、水抜き穴から入ってくる海水もお湯のように熱い。そして風で水蒸気が流れてくる度に、湿気でレンズが曇ってしまう。

 夜が明け、辺りが明るくなると、空高くまで上る水蒸気が更に迫力の世界を作り出した。目の前で繰り広げられる火山活動は、地球が生きていることを実感させてくれた貴重な体験であった。

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 東京都の小笠原諸島でも、父島から西へ130キロの太平洋上に、海底火山の噴火によって溶岩が噴出し、新しい島が誕生したばかりだが、ハワイ島では火山活動を間近に見ることができる。

 折しも、東京・羽田からハワイ島コナへの直行便が復活したばかり。大地が生まれる瞬間を、安全な場所から見るだけでも、地球の鼓動を感じられるだろう。

週刊朝日  2017年1月27日号