大会は「KOSUKE KITAJIMA CUP 2017」として開催。会場で北島康介さんから祝福を受ける渡辺一平選手 (c)朝日新聞社
大会は「KOSUKE KITAJIMA CUP 2017」として開催。会場で北島康介さんから祝福を受ける渡辺一平選手 (c)朝日新聞社

「2分6秒67は自分でもびっくり。尊敬する北島さんの前で世界記録を出せて、めっちゃうれしいです」

 1月29日、東京都選手権(東京辰巳国際水泳場)で、男子200メートル平泳ぎの世界新記録を出した早稲田大学2年の渡辺一平選手は、声を弾ませた。会場で解説者としてレースを見ていた北島康介さん(34)もコメントした。

「世界記録に立ち会えて興奮している。お家芸の平泳ぎで、強い男子が育ってきたことをうれしく思う」

 渡辺選手は、身長193センチの大型スイマー。体形からは敬愛する北島さんとタイプの違う選手に見えるが、「抵抗の少ない泳ぎがぼくの生命線」と話し、北島さんがこだわり続けた「避抵抗のテクニック」を受け継いだことが、史上初の2分6秒台につながった。

 一般的に高身長の選手は抵抗が大きく、平泳ぎには向かないとされる。だが、渡辺選手の場合、水の中で前進するときに体が細くなったように見える。渡辺選手がこの泳ぎを獲得する際にヒントを得たのが、北島さんの泳ぎだった。北京五輪直前の2008年6月、北島さんはこのプールで史上初めて2分8秒を破る2分7秒51の世界新をマーク。渡辺選手はその動画を繰り返し見たという。

「なんでこんなに速いのかなと考えながら、何度も何度も見ました。水中から撮った映像もあって、抵抗を減らす技術がすごいんじゃないかなと思いました」

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